月別: 2018年9月

災害救助犬とは


地震、土砂崩れ、雪崩など、災害は様々です。もし、土砂崩れによって家の中に閉じ込められてしまったら救助されるのを待つしかありません。しかし、積もった土砂の中から人を見つけ出すは至難の業です。そこで登場するのが災害救助犬です。皮膚から剥がれたタンパク質や呼気など、人間が発するストレス臭を感知することができます。

日本国内に災害救助犬はほとんどいない?

日本に災害救助犬はほとんどいない、という風に書くと「え、それだったら災害のときどうしたらいいの?」と不安に思う人もいるかもしれません。
これは半分正しく、半分間違っています。
災害救助犬がほとんどいないのは、あくまで公的機関においてです。警察犬とは違って、災害救助犬は民間の団体によって運営されていることがほとんどです。
災害時には警備犬が災害救助犬として投入され、さらに民間の災害救助犬団体と連携を取って、現場で人命救助に当たっているのです。

熊本地震での活動

平成28年で発生した熊本地震は、まだ記憶に新しいと思います。4月16日の未明に起こった本震により、南阿蘇村高野台地区は人家ごと土砂に飲み込まれました。助けを求める人々を救助するため、災害救助犬が集結。
災害救助犬本部を南阿蘇村長陽庁舎内グラウンドに設置しました。全部で47頭も駆けつけ、7名の行方不明者がいる高野台地区を中心に捜索がスタートしました。警察や自衛隊が土砂を排除し、災害救助犬が確認を行う。この繰り返しにより、すでに息を引き取っていたものの行方不明者4名が発見されたのです。

犬の適性と訓練

災害救助犬はどんな犬種でもなることができます。とはいえ、一般的には狩猟本能がある犬の方が適正があると言われています。日本では、ゴールデン、ラブラドール、シェバードなどが多いようです。甲斐犬や柴犬といった日本犬も活躍しています。
災害救助犬を育成するには、幼いときから訓練をする必要があります。まず、ボールを使用して、ボールが好きな犬に育っています。次にボールを使った服従訓練を行い、ある程度できるようになったら捜索訓練も一緒に行います。
訓練を始めてから認定審査に合格するまでは早くても1年以上かかります。審査にパスしたから終わりではなく、合格してからも訓練は毎日継続されるのです。

日本に公的な災害救助犬がほとんどいないことや、どんな犬種でも災害救助犬になれることなど、意外と知られていない事実が多くあったのではないでしょうか?
災害救助犬について知っておくことはマイナスではありません。もし、あなたが災害に巻き込まれたとき災害救助犬がいるという知識は希望に変わるでしょう。

保健所から救われて災害救助犬になった犬・夢之丞(ゆめのすけ)

人の人生がそれぞれ異なるように、災害救助犬になる犬の生い立ちも様々です。最初から災害救助犬として育てられた犬もいれば、数奇な運命を経て人命救助をするようになった犬もいます。今回は、保健所で殺処分されかけていたのにも関わらず、立派な災害救助犬として活躍するようになった一頭の犬を紹介します。

夢之丞(ゆめのすけ)とは?

夢之丞は、目覚ましい活躍をしている災害救助犬です。2015年には、日本動物愛護協会から「功労動物賞」も授与されています。
そんな夢之丞は立派な犬種というわけではなく、ただの雑種なのです。野良犬として保護されていたところを、ピースウィンズ・ジャパンのスタッフである大西純子さんに引き取られたのでした。

夢之丞が活躍しているピースワンコ・ジャパンのSNSはこちら

ピースウィンズ・ジャパンとは?

ピースウィンズ・ジャパンとは、広島の認定NPO法人です。紛争地帯に住んでいる人たちや、災害に見舞われた地域に人道支援を行っています。
ピースウィンズ・ジャパンには、5頭の災害救助犬がおり、そのうちの一人が夢之丞なのです。
大西さんは、外国から派遣された災害救助犬の活躍を見て、自分たちも救助犬を育成することを思いついたと言います。人命救助に役立てるため候補の犬を探していた大西さん。そんなとき彼女が出会った犬こそ、夢之丞でした。

殺処分寸前から災害救助犬へ

広島の愛護センターに訪れた大西さんは、殺処分される部屋のそばのゲージに一頭だけいた夢之丞と出会います。まだ仔犬だった夢之丞は、2日後に殺処分が決定されていました。
大西さんは夢之丞を連れて帰り、災害救助犬として育てることを決めます。しかし、担当者が発した一言は「救助犬にはなれませんよ」という大西さんの考えを否定するものだったのです。
夢之丞は、人になつかず、人を見ると異常に怯えてしまう犬でした。
しかし、大西さんには「夢之丞は人の命を救う仕事に向いている」と予感があったと言います。そして、訓練がスタート。夢之丞は持ち前の嗅覚の鋭さを発揮し始めます。
4年後の2014年、ついに夢之丞の出番がやってきました。広島で大規模な土砂災害が発生したのです。
「この現場にはまだ早いかもしれない」と思う大西さんの予想に反して、救助隊員が大勢いる中でも夢之丞は賢明な救助活動を行いました。残念ながら息を引き取っていたものの、夢之丞は行方不明者1名を発見したのです。
それから夢之丞は、フィリピンの台風、ネパールの大地震、熊本の大地震、と次々出動していきました。夢之丞の丁寧な仕事ぶりは、スタッフの間で「職人」と評価されています。

夢之丞が教えてくれるのは、可能性を捨ててはいけないということかもしれません。災害救助犬になれないと言われた夢之丞は、立派な災害救助犬となって人々に勇気を与え続けています。

災害救助犬の活動内容


現場において災害救助犬はどんな活動をしているのでしょうか。
テレビのニュースで災害救助犬が出ているのを見たことある人も多いかと思います。しかし、実際にどういうプロセスで行方不明者などを捜索しているのか知らない人がほとんどですよね。
災害救助犬は、闇雲に行方不明者を見つけようとしているのではありません。どういったプロセスで発見まで至るのか見ていきましょう。

災害現場での活躍

3頭選ばれた災害救助犬にはそれぞれハンドラーがつきます。その上に指示を与える隊長がおり、1チーム4名で災害救助犬は3頭です。
3頭全てが捜索に当たるわけではありません。1、2頭は待機して報告を待ちます。1頭が行方不明者発見の反応を見せたら、もう1頭を向かわせて確認させます。このとき2頭目の反応がよくわからなかった場合、残る3頭目が確認します。3頭中2頭が発見の反応を見せたら、行方不明者がその場にいる可能性は高いです。警察、消防、自衛隊などに位置を知らせ、救助してもらえるよう頼みます。

山の行方不明者の搜索

山で行方不明者が出た場合、捜索にはひとつの登山道を災害救助犬が担当します。もし災害救助犬が数頭いるのであれば、確認班と偵察班に分けて捜索を行います。
ほとんどの行方不明者は、迷子になってしまったか、滑落したのかどちらかです。捜索範囲の見当をつけるのが難しい広範囲の捜索になります。
そのため偵察班は先に進み、人間の臭いがあるか軽く探索します。何らかの反応があれば、わかりやすい目印をつけて先に進みます。後から来る確認班は、目印の付いている場所だけを詳しく深く捜索します。
災害救助犬がたくさんいればいいのですが、少ない場合は犬のスタミナの消耗を考えながら捜索をしなくてはいけません。

災害救助犬の訓練

災害救助犬は、倒壊した家屋や積もった瓦礫の中から不特定の人の匂いを探索する能力が求められます。そのため、普段から、災害現場をイメージしたフィールドで隠れた人を発見する実践捜索を行っています。
災害救助犬として一人前になるには約3年かかると言われています。いくら訓練を積んだところで、実際の現場はかなり違います。危険な現場において自分の力を発揮するには心身のタフさはもちろんのこと、人との連携、経験の蓄積が必要です。自治体や救助機関との連携をより強くすることで、災害救助犬の活躍のフィールドはさらに広がることでしょう。

世界で有名な災害救助犬たち


災害救助犬は日本だけではなく、世界のあちこちで人命を救っています。今回は世界で活躍している災害救助犬の中から、とくに有名な3頭について紹介します。これを読めば災害救助犬がどれだけ優秀で勇敢なのかわかることでしょう。

バリーについて

バリーは世界で一番有名な災害救助犬とも言われています。スイスにあるサン・ベルナール修道院の山岳救助犬です。
バリーはアルプスの雪深い山岳地帯で、およそ40名以上の命を助けています。その功績により世界中で有名になりました。バリーが生涯を送った14年の中で、最も知られているエピソードは洞窟にいた少年を救助したものです。
バリーは洞窟の中で凍死しそうになっていた少年の上に覆い被り、自分の体温で少年を温めました。その後、背中に少年を乗せて修道院まで運んだのです。
バリーの功績はいまでも残っており、記念碑が建立されています。

スウォンジジャックについて

スウォンジジャックは水難救助犬として広く知られています。体格はそれほど大きくなかったと伝えられているにも関わらず、水難救助犬の歴史に名を連ねることができたのは傑出した水泳能力を持っていたからといわれています。
1931年に川で溺れていた12歳の少年を救助したことを皮切りに、生涯で27名を救助しました。スウォンジジャックの活躍は評価され、市議会から栄誉の証シルバーカラーを授与されています。

レイラについて

2011年3月11日に起こった東日本大震災は多くの悲しみ生みました。
シャーマンシェパードのレイラは、訓練士である村田さんとともに東日本大震災のときに必死な捜索活動をした救助犬です。
震災翌日の3月12日、レイラと村田さんは救助活動をスタートしました。過酷極まる現場で、一週間もの間、生存者の捜索を行ったのです。
大量の遺体、瓦礫の散乱などこの世のものとは思えない悲惨な状況でした。しかし、レイラはめげることなく必死に生存者の捜索を続けたのです。

激しい臭いが原因なのか、強いストレスが引き金となったのか、レイラは嗅覚を失ってしまいました。救助犬を引退せざるえなくなってしまったのです。しかし、自分を顧みず賢明な捜索活動をしたことは多くの人の心を打ち、レイラの頑張りは日本中に知れ渡ることになりました。

今回は、バリー、スウォンジジャック、レイラといった3頭の救助犬を紹介しました。救助犬は時に自分を顧みず、人命救助に尽力してくれます。
私たちにとって救助犬は大切な存在といえるでしょう。感謝の気持ちを忘れないようにしたいですね。

災害救助犬トレーナーになるには

人の命を助ける災害救助犬。しかし、災害救助犬は自分だけで活動しているわけではありません。人命救助を行うためには、災害救助犬のパートナーであるトレーナーの存在は不可欠です。
災害救助犬のニュースを見聞きしたことや、実際に助けられたことがきっかけで災害救助犬トレーナーを目指すことも少なくないでしょう。
今回は、災害救助犬トレーナーがどんな仕事なのか、災害救助犬トレーナーになるのはどうしたらいいのか、といったことを紹介します。

どんなお仕事?

災害救助犬とは、地震発生時の人の救助や、土砂崩れでの遭難救助など、災害時に人命救助を行う犬のことです。
災害救助犬の育成は、JKC公認災害救助犬育成訓練所など、全国それぞれの団体でお行われています。JKCは地震災害を主としており、認定試験を毎年行っています。公認の訓練所で訓練された犬が、受験にパスすると晴れて災害救助犬として認定されます。
また、日本災害救助犬協会では、一般の愛犬家を対象にして合同訓練を実施しています。いずれも、東京消防庁等と連携して、要請があれば事故現場に出動します。

必要な資格について

災害救助犬トレーナーになるには、認定訓練士資格を目指すのが普通です。しかし、国家資格があるわけではないので、無資格でも訓練士として活動することができます。
ただ、業界で活躍することを目標にするのなら、認定訓練士資格の有無は重要です。
有名な認定訓練士資格は3つあります。JKC公認訓練士、NPD公認訓練士、JSV公認訓練士です。
資格の取り方は2パターンあります。
1.専門学校や訓練士養成学校に通う
2.見習いとして訓練所に入る
訓練所だと約5年は見習いとして修業しないといけません。専門学校を卒業したとしても訓練所の経験が2~3年は必要と言われています。
道のりは険しいので相応の覚悟が必要です。

災害救助犬トレーナーになる方法

災害救助犬トレーナーになる方法は幾つか存在しています。先述した通り、専門学校や訓練所に通って資格を目指すのも一つの方法です。業界において活躍したいのであれば、険しい道を覚悟の上で資格習得を目指すといいでしょう。
その他に、個人でやる方法もあります。災害救助犬トレーナーになるのに資格はいらないため、自分の犬を災害救助犬にトレーニングすることも可能なのです。
ただ、独学でやらないといけないため、よほど自信がないと難しいかもしれません。

災害救助犬トレーナーになるのは強い意志と覚悟が必要です。資格習得を目指して、日々訓練を重ねることが大切です。
しかし、自分でトレーニングした災害救助犬が見事、人の命を助けたときは何よりも嬉しい出来事になるでしょう。